[京都工芸繊維大学美術工芸資料館]
長谷川潔版画作品展
本展覧会では、日本の近代版画を代表する銅版画家である長谷川潔(1891-1980)の作品を紹介します。神奈川県横浜市に生まれた長谷川潔は、日本で油彩や素描そしてエッチングの技法を学んだのち、1918年に版画技術習得のためにフランスへと渡ります。1923年からサロン・ドートンヌ(秋のサロン展)などに出品するようになり、25年にはパリで個展を開催するなど早くからパリで人気作家となります。第二次世界大戦中には疎開を余儀なくされたり苦労も多かったようですが、1966年にはフランス文化勲章、翌年には日本で勲三等瑞宝章を受勲するなど世界的な版画家としての地位を確立しました。渡仏後いちども日本に帰ることなく、1980年12月にパリで亡くなりました。
長谷川の版画で最も注目されるのは、マニエール・ノワール(メゾチント)と呼ばれる古典技法による作品です。17世紀半ばにオランダで考案された銅版画の技法で、主にイギリスで発達しましたが、版画技術の発展、様々な技法の開発の流れの中でいつしか廃れてしまい、20世紀にはヨーロッパでマニエール・ノワールを実践する版画家はいなくなってしまっていました。この古い技法を長谷川は試行錯誤を繰り返しながら復活させたのです。
ニードル(針)で細い線を刻んでいくエッチングは細かい線描表現が特徴ですが、ロッカーという器具で板全体にささくれを作り、それをヘラでならすことによって絵を描くマニエール・ノワールは複雑な明暗効果を生み出すことができます。特にその名前(マニエール・ノワール=黒の技法)が示している通り、背景部分を黒く沈ませることができるため描かれている事物が浮かび上がるような幻想的な効果をもたらすことができます。とりわけ長谷川が作り出す黒はただの漆黒ではなく、彼自身が「黒には七色の色がある」と言ったように、微妙な色調が現れています。
マニエール・ノワールで有名な長谷川ですが、ドライポイントやアクアチントなど他の銅版技法にも積極的に取り組み数多くの傑作を残しています。それらの技法による作品も黒の世界と合わせてご覧いただき、長谷川潔の銅版画をご堪能ください。
展覧会名 | 長谷川潔版画作品展 |
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会期 | 2022年2月21日 〜 2022年4月23日 |
開館時間 | 10:00 – 17:00 入館は16時30分まで |
休館日 | 日曜日・祝日、2月25日(金)、2月26日(土)、3月12日(土) |
入場料 | 一般200円、大学生150円、高校生以下無料 |
URL | http://www.museum.kit.ac.jp/20220221h.html |