[京都工芸繊維大学美術工芸資料館]
月次祭礼図屏風・浜松図屏風復元プロジェクト「よみがえる中世屏風―京洛の祝祭、白砂青松の海―」

 やまと絵の屏風で中世にさかのぼる作例は少なく、制作年代や絵師が明らかなものはほとんど遺されていません。その技法や主題の特徴を明らかにするため、愛知県立芸術大学の日本画古典実技の専門家を中心に、日本史や美術史の研究者と共同で復元プロジェクトを進めています。
 復元作業の大きなヒントになるのが、近世に写された模本と中世絵巻の中に描かれた画中画の屏風絵です。2015年からは、「月次祭礼図屏風模本」(東京国立博物館蔵)の復元に取り組みました。江戸時代に写された模本からは、失われた中世の原本の図様を読み取ることができ、応仁の乱以前の京都の風俗を描いた唯一の大画面として貴重です。ただし、模本の彩色は不完全で、もとの絵画の全容は明確ではありませんでした。今回、模本の描写を精密に模写するとともに、日本史・美術史の両面から祭礼・風俗描写の特質や当時のやまと絵様式の分析を進め、これらを統合して室町時代盛期における京都の繁栄を屏風に復元しました。
 2018年から開始したのは、室町時代の「石山寺縁起絵巻」(石山寺蔵)第五巻の中に描かれた、雲母地の画中画「浜松図屏風」の復元です。中世のやまと絵屏風には、金銀箔の小片を撒きつぶした「みがきつけ」や、下地に雲母を厚く塗布する「雲母地」など、特徴的な技法が用いられました。これらは、近世以降の屏風ではほとんど使用されていない幻の技法です。この画中画は、雲母地屏風の実態を伝えるものとして重要であるだけでなく、中世に最も流布した白砂青松の浜辺を描く「浜松図」としても注目されます。小さな画中画を、原寸大の屏風の大画面に復元することで、室町時代の技法と画題の双方を再検証しています。
 本展覧会では復元された「月次祭礼図屏風」「浜松図屏風」を中心に、その過程で制作された下図類、「みがきつけ」や「雲母地」技法の試作品、画材や道具などを展示します。

○主催:京都工芸繊維大学美術工芸資料館
○共催:愛知県立芸術大学
○企画:愛知県立芸術大学文化財保存修復研究所
○協力:京都・大学ミュージアム連携
〇助成:JSPS科研費JP22H00628「中世やまと絵屏風の技法復元を中心とする総合的研究」(阪野智啓)・JP22K00212「中世大画面祭礼図の構図法の研究-月次祭礼図屏風模本の失われた左隻の推定を中心に-」(岩永てるみ)

◎関連企画1
○シンポジウム「中世やまと絵屏風を技法と主題から読み解く」
日時:2024年1月6日(土)13:00~17:00(開場12:30)
会場:京都工芸繊維大学60周年記念館1階記念ホール
定員:120名(※当日受付)

スケジュール
13:00~13:10
開会挨拶:並木誠士(京都工芸繊維大学美術工芸資料館・館長)

13:10~14:40
第一部:「月次祭礼図模本」の復元
・模本から読み取る技法と表現
 阪野智啓(愛知県立芸術大学・准教授)
 岩永てるみ(愛知県立芸術大学・准教授)
 安井彩子(愛知県立芸術大学文化財保存修復研究所・研究員)
・「月次祭礼図屏風」に描かれた幕府と政治的な事物
 小島道裕(愛知県立芸術大学・非常勤講師)
・歴史史料から考える描かれた祭礼
 河内将芳(奈良大学・教授)

14:55~15:50
第二部:「石山寺縁起絵巻」画中屏風の復元
・絵巻に描かれた雲母地屏風と裂地の再現
 阪野智啓(愛知県立芸術大学・准教授)
 中神敬子(愛知県立芸術大学文化財保存修復研究所・研究員)
・絵巻の画中画からひろがる中世屏風の世界
 髙岸輝(東京大学・教授)

16:00~17:00
座談会
司会進行:井戸美里(京都工芸繊維大学・准教授)
並木誠士・小島道裕・河内将芳・髙岸輝・阪野智啓

展覧会名 月次祭礼図屏風・浜松図屏風復元プロジェクト「よみがえる中世屏風―京洛の祝祭、白砂青松の海―」
会期 2024年1月6日
〜 2024年2月9日
開館時間 10:00 – 17:00

入館は16:30まで

休館日

日・祝日、1月27日(土)

入場料

無料

URL https://www.museum.kit.ac.jp/20240106.html
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